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じんましんについて

 蕁麻疹(じんましん)はごくありふれた疾患です。誰もが経験するものといっても過言はないと思います。夜間に突然、体中に痒みがでて、膨疹や紅斑が多発すると誰しも不安になります。あるいはそれほど辛くない症状(痒みや赤味程度)と思って放置していてもそれが存外長期間続くと体に異常があるのではと不安になります。医者にかかれば、診断は視診と問診により確定し、治療は原因、悪化因子の除去と抗ヒスタミン薬の内服が基本であるという点で明快です。 しかし、実地医療では原因を明らかにできない症例が多く、目的の不明確な検査や薬物療法が続けられることもしばしばです。
 また、蕁麻疹はアレルギーと考えられがちですが実はそうではありません。蕁麻疹はある原因により皮膚マスト細胞が脱顆粒してヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が組織内に放出されることによって出現します。 マスト細胞の活性化機序としてはIgEを介したI型アレルギーが広く知られています。 したがって蕁麻疹も「アレルギー反応によっておこるもの」と考えられやすいのでしょう。しかし、実際はアレルギー性の蕁麻疹は全体の5.4%にすぎないという報告があります。(平成15〜17年広島大学皮膚科蕁麻疹病型別患者数調査から) 医療機関を訪れる蕁麻疹患者の7〜8割は原因不明の特発性の蕁麻疹ともいわれています。
 蕁麻疹がアレルギーに因らずにでる例としては、摂取食物が、蕁麻疹反応を起こす直接要因となることもあります。鮮度の下がった青身の魚(さば、まぐろ、さんまなど)はその代表で、意外な物に豚肉、もち、たけのこなどもあり、仮性アレルギーとして蕁麻疹症状があらわれます。この場合、健常な人でも蕁麻疹が出ますので、ましてや蕁麻疹の出やすい人は特に注意が必要なわけです。また、アスピリンなどの消炎鎮痛剤も蕁麻疹がでやすくなる要因のひとつと挙げられます。通常では大丈夫な食べ物(刺激)でも、薬剤によって反応しやすくなってしまい、発疹がでてしまうことを知ってかなければいけません。原因を知る検査としては過去に蕁麻疹の原因となった頻度が高い項目をとりまとめて血液検査ができます。治療や生活上の注意点を明確にするため、個々人の体質を適切に判断する材料となります。
最後に蕁麻疹の治療についてです。蕁麻疹は出たり消えたりの状態ではかえって、出やすくなります。ある程度の期間、全くでない状態を保たなければ、おさまりません。内服をやめてすぐ再発するようでは不十分です。蕁麻疹抑制のための服薬は専門医の指示に従いましょう。蕁麻疹は体調、体力に左右されることも事実です。日常生活の見直しも必要となります。


日常生活の注意点
ストレスをためない。
暴飲暴食を避ける。
睡眠を十分にとる。
じんましんの部分をかかない。刺激しない。 どうしてもかゆい時は冷やす。
入浴などの温熱負荷は避けた方が無難である。
疑わしき原因(食べ物、薬剤、行動など)を避ける。
以上を守りながら、体調が落ち着くのを待ちましょう。
(2009年ホームドクター掲載原稿)




急性の病気?慢性の病気?

 皮膚病の治療では急性期の対応が重要な疾患があります。それと同時に急性期の治療と慢性期の治療も異なるわけです。慢性の病気でも急性増悪をする場合もあるわけですから、同じ病名でも治療内容や指導内容が異なることになります。
 状態に合わせて早くそして手間なく治したいのは皆、同じですが、特に急性期の感染症は早く治療しましょう。
 そして、診察時にはいつから病気を患っていて、いつから“急に悪くなったか”を教えていただけると助かります。




免疫制御機構について

従来Th1、Th2の2種類のヘルパーT細胞により免疫は調整されているとされてきた。特に自己免疫性疾患はその中でもTh1により引き起こされると考えられていた。しかし、MSの実験モデルであるEAEマウスや関節リウマチのモデルであるCIAマウスでIL-12RやTNF-γ欠損マウスで疾患活動性が悪化することから、それ以外の経路が考えられていた。近年ではIL-23、IL-17がそれらの実験マウスでの高値が認められこの経路が自己免疫性疾患で重要な役割を果たすことが明らかとなってきており、IL-17を産生するヘルパーT細胞をTh17細胞と名づけられた。現在、従来のTh1、Th2に加え、Th17、 Treg(抑制T細胞)の4種類により各々のバランスで免疫が制御されていると考えられている。しかしながらまだ、バランスの制御機構など不明な点も多い。
 知識の整理も言葉にしてみると大変です。乾癬、アトピー性皮膚炎にも通じる免疫やアレルギーの話は大きな変革をしてきています。最近は樹枝状細胞に注目して皮膚の反応を想像して“科学”しています。




『かゆみ』について

2009年2月6日、かゆみのメカニズムについての京都大学助教生駒晃彦先生の講演会を聴きました。
 かゆみを伝達する皮膚の神経は特定されてきていますが、中枢は特定複数箇所で感知している感覚とのことです。ヒスタミンは重要なかゆみの伝達物質ですが、他のかゆみ伝達経路もあるために抗ヒスタミン剤だけでは抑えられないかゆみもあります。かゆみ感覚は思ったよりも複雑な機構です。
 かゆみで悩む患者様は多いのですが、どういう種類のかゆみか、対応にいろいろ試行錯誤の毎日です。




湯たんぽによる熱傷(やけど)にご注意を

寒い夜、ふとんに湯たんぽをいれてあったまるということを実行している方も多いようです。不況の昨今、夜間の暖房節約をと考えている人もいるかもしれません。
しかしながら、注意しなければいけないのが、湯たんぽによる低温熱傷です。長時間皮膚温を上げすぎると皮膚組織変性を起こし、強烈な炎症反応を引き起こし、皮膚が壊死します。瞬間的に熱いものに触れての熱傷よりも受傷深度が深くなりやすいのが特徴です。
病初にはまず、炎症を抑え、二次感染を防ぐ治療を行います。応急処置をして安心してしまって放置してしまうと、その後に組織で起こる炎症や変性組織の排除が広範囲に及んでしまう場合があります。そのときは壊死組織の除去、潰瘍の治療まで行わないといけなくなります。
 ついうっかりからひどいことにならないように、また、受傷してしまったら早く皮膚科を受診しましょう。



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